8月13日

7時頃に目覚めて、コーヒーアディクションのぼくは、近くのファミマに行って、ひとまずアイスコーヒーを手に入れる。昨日ルヴァンで買ったカンパーニュを頬ばりながら、上高地を抜けて高山を目指す。急峻な谷間に、硫黄の混ざった川が流れる崖を削った道を登っていく。古人はここを通ったときになにを思ったのだろうか。

 

峠を越えて、山をぶち抜いているトンネルを潜って岐阜へ。高山から郡上八幡を目指す。高山の清見から郡上へと抜けるせせらぎ街道を走る。ぼくはこの道が好きだ。清見を走っていると、おっちゃんと犬が100メートルほど先で道路を渡りはじめた。藍色の作務衣に丸めがねのおっちゃんが、少し長めのリードでフレンチブルドッグを引っ張っていた。遠くから向かって来るぼくの車に気付き、道をさっと渡ろうとしていた。片車線を渡り終えたとき、ぼくの運転する車は、数十メートル手前まで来ていて、少し減速して走っていた。おっちゃんが道路を渡りきったそのとき、引っ張られていたフレンチブルドッグがいきなり、反対側車線の真ん中でごろんと寝転がり腹を上にして、背中をアスファルトで掻きだした。その瞬間、ぼくはおっちゃんと犬の真横にいて、にやっと笑ったら、おっちゃんと目が合った。おっちゃんもにやっと笑っていた。いま背中がかゆいから掻くのだ。それのなにがおかしいと言わんばかりの、フレンチブルドッグに、老子の姿を見て、小林一茶の「大仏の鼻から出たる乙鳥哉」を思い出した。

 

郡上八幡でいったん立ち止まって、郡上おどりの講習会。2時間ぶっ通しで、かわさき、げんげんばらばら、春駒、さわぎを習う。スローテンポのループミュージック、最高だな。今日は練習だけ。明日は飛ぶ。下駄を仕入れなきゃ。自宅への帰り道には、どこを走っていても月が気になる。明後日が満月なので、ほとんど盆のように丸い。盂蘭盆絵、死者とダンス。明日は夜通し、踊り倒す。