5月3日

古い道を行く。先人が幾重に過ぎた道を行く。面影ねむる道を行く。

 

高速道路は好きではない。空中を瞬間移動するように、場所と場所を繋げている非常に便利なものの、もし時間を気にする必要がないなら、場所と場所を結んでいるだけの構造物には乗らない。道には面影があるから、場所と場所の間をよく覗き込みたい。速すぎると見えない。

 

結界へ入る前の汚れを落とす禊ぎのように、風呂で一日の汚れをおとす。山のエネルギーの一部をうちへ持ってくる正月の門松のように、旅先で土産を買うのは、旅先の面影をうちへ持って帰る。朝にカーテンを開けて日差しを浴びるのは、目覚めのブーツストラップ。

 

わたしは、大陸から日本海を渡って北陸にたどり着き、南北に連なる山脈を伝って南下し、鈴鹿の山を根城にしていた雑密の末裔なのではないか。東大寺の別当、良弁はこのあたりにおられたそうな。