10月19日

ある本や、ある人や、あるできごとに出会った瞬間、世界の見え方が、いままでとは大きくかわることがある。そのなにかから得られるものを、知識と呼ぶとする。その知識は言葉でできているのだから、つまり世界は言葉でできている。その言葉の意味と使いかたを正確に理解しようとすることが、世界を面白く見るためのコツだとおもう。そんな最近、世界の見方が変わった。

 

伊丹十三の『たんぽぽ』を見て、すばらしいと思った。喧嘩をするが最後には認め合うこと、細部に神が宿ること、病院を嫁にとられた先生はホームレスと暮らしておりアングラな彼らが有益な情報を持っていることのメタファーだということ、生ずるも有とせずだということなど。

 

そうです。明るい元気なだけの最近の作品がつまらなく、こうやって負の要素が有益に変わることが描かれているものに惹かれる。現実もまたそうなのだとおもう。それで、根本になにがあるのかというと、倫理のようなものなのだとおもう。たんぽぽにはそれがある。