10月14日

昼過ぎに、会社のある山里の小さな祭りへ出向く。

 

町のはずれから(東端の集落と田の境界から西へ向かう)神社へ、踊り子は太鼓をたたき、ひとを呼び集めながら、行列をなして練り歩く。踊り子はその地区に生まれた長男だけで構成され、踊り役を引き継ぐ人同士の関係を兄弟と呼び、家族の兄弟のように、ときにはそれ以上の関係を築くという。

 

行列の先頭は、猿が引き受ける。酒を呑んでふらふらなりながら、見物客にちょっかいをだしながら、歩く。馬と馬子、鬼が続く。赤い布で顔を覆った唄い手、白装束の笛吹き、女形のように白くぴっちりした衣装の太鼓、大きく派手な笠を背負った踊り手が続いていく。踊り子が練り歩くのに連られて、町民も一緒に、町の中央の神社へと向かう。神社の手前までたどり着いたら、宮司がお祓いをし、橋をわたり鳥井をくぐり、神社の境内へ入る。

 

神社の広場の中央には土俵がある。前日には奉納相撲が行われていた。社殿にむかって、土俵に太鼓が居座り、その前方に笛隊と唄い手が並ぶ。鬼が土俵を挟んで対面に位置し、その間に6人の踊り子は土俵を中心にして円を作る。曼荼羅かな。太鼓の打音を拍子に、唄がはじまり、それにあわせて、舞がはじまる。ときおり、笛の音が聞こえる。これは風だ。約2時間、ゆっくりした拍子の踊りがつづく。3曲唄われたようだが、抑揚がほとんどないから、切れ間がわからない。まるでこの地のひとはこうやって飄々と吹く風のように暮らしてきたようだ。

 

伊賀の山間の集落で伝えられてきた踊りに、この地域の風景を感じる。またこの時期の祭りということは、田の神が山へお帰りになられること、田の神と山の神は同じだということ、その神は猪であり女性でもあることから相撲をとったり男のみで構成されているのではないか、と想像した。この地域、なにせ、伊賀でも有名な酒飲みの村、辛口の日本酒を飲み仰ぎながら、踊り子は舞う。祭りではなく祀り、フェスティバルではなくセレモニー。収穫の感謝と祝い、長く辛い冬へ向け村では支度をはじめる。帰り道、月がとてもきれいだった。