10月7日

昼に、松岡正剛『ちょっと本気な千夜千冊虎の巻』を読む。濃厚な読書案内のあとがきに、千夜千冊全巻を手に入れるのに、「生活を切り詰める必要が出てくる」とあり(全巻で十万円近くかかる)、ドキッとした。

なにもいやなことが起こらないことはこれ以上ないことなのだろうが、切望するモノを手に入れたいときや、熱意に全力で向かうときには、腕を必死に振り、体を弓のようにしならせ、強く地面を蹴って走り続けるほかない。

手に抱えている荷物を手放さなければ、必死に腕を振ることはできない。苦しい生活を強いる必要はないが、ちょっと背伸びをしなくては届かぬ未知と生活を切り詰めなけりゃ得られぬくらいの意気を絶やさぬように身銭を切る。

『鏡の国のアリス』の赤の女王は、「ここではね、同じ場所にとどまるためには、思いっきり走らなければならないの。どこか別の場所に行きたいなら、少なくともその2倍速く走らなきゃ!」と言う。

寝る前に、ムナーリ『ファンタジア』を読み終え、付箋の箇所を読み返す。いくつかのうちのひとつより。「ファンタジアに恵まれた人とは、絶対的に新しいことを考えだす人ではなく、その人にとって新しいことを考えだす人のことだ。その考えが本当に新しいかどうかは、当人にしてみればどちらでもいいことかもしれない。」ムナーリさん、僕のいいたいことわかってはる。