3月13日

仕事には2種類ある。利益を追求するものと、ひと肌脱ごうかといったもの。どちらが大事かというと、ふたつのバランスが大事なのだと思う。能の「ワキ」と「シテ」。道の裏と表は、善悪じゃない。律令制の政と祭のまつりごと。世界にはふたつのものが用意されてきた。西洋のふたつは、善と悪のように、ふたつの対立を基本構造にもつ。その考えで日本のものを見てしまうと、おかしいと感じる。だから、日本のものを見るときには、ふたつのものは、二項同体とみる。相反するであろうとおもっていることは、うまく馴染んでいる。神と仏なんてまさに。

 

仕事が終わって、帰宅すると、ロバート・フランクのアメリカンズが届いていた。製本はステイデル。ケルアックの序文に痺れ、写真の配置に惚れ、モノクロ写真から匂いや色を感じ、funeralと題した写真には、葬式は写っていない。葬式を眺める正装のおじさんたちが黒い車に持たれてあごに手をやっている。ないからこそ想像する。想像を掻き立てるとき、そこに、匂いや色や背景がうまれるとおもう。

 

夜、窓を開けて車を走らすと、春のにおいが入ってくる。車内はアデルのRumor has it.