12月9日

朝、通勤の車内でシナトラをかける。キンと冷えた朝に彼のスウィングが流れるだけで、朝が突然ゴージャスになる。夜はピンク・フロイドをシャッフルでかける。ピンク・フロイドの音楽って心の奥にさらっと入って来て、ズシンとなにかを残す。低音のリズムが夜にぴったり。リアルタイムでSFを感じる。TimeやAnother brick in the wallはやっぱりいい。

 

いまおもっていることを、だれかれかまわず喋っていると、伝わらないことがよくある。いまやっていることにたどり着りつくまでの道が楽しいし、その話をするのが好きだということは、伝わらなかった。たとえば、ぼくがいま『古事記』を読むに到るまでのチェックポイントはだいたいこんなのだ。本を読むきっかけとなった2冊にはじまり、宮本常一『塩の道』を読んで日本の文化史の別の視点を得て、松岡正剛『日本という方法』を通って、ぼくは結果より方法が好きだと悟り、日本人の感情を文化に落とし込む術を学び、そのあと読んだいろいろの本に、『古事記』の話が出てくるから、これは読まなくちゃなと思いはじめた。だから、『古事記』を読んでいるとすごくおもしろい。『古事記』を読むまでの道とは、『古事記』を読むための準備のことなのだろう。

 

今日ぼくが言いたかったことをうまくいってくれるピンチヒッターが見つかった。『謎床』のドミニク・チェンさんにまかせて今日をクロージングする。

 

「ある人にとっての情報の価値はその情報との出会い方にも拠るという経路依存の問題です。それより問題は、そうやってアクセスした情報、つまり、ほとんど何ら身体的負荷、精神的負荷をかけずにスルスル入手した情報というものを、人は非常に粗雑に扱ってしまう。」