12月5日

松岡正剛『17歳のための世界と日本の見方』を読みかえす。

 

文字のなかった時代、物語は口と耳と身ぶりで伝えられた。「言語が物語を生み出したのはまちがいないのですが、一方で物語が言語のしくみを生み出したという見方もできるんです。」「われわれは、物語をつくってそれを人に伝え、お互いに物語を継承していくうちに、だんだん言語というものがどういうものであればよいのかを、知っていたのです。」そのころの物語を語る人たちが、語り部である。世界で一番古い作者のわかっている物語はホメロスのイーリアスとオデュッセイア。どんな物語にも、母型がある。世界の英雄伝説の構造を分析し、発見したのが、ジョゼフキャンベル。彼は、英雄伝説は、「セパレーション」「イニシエーション」「リターン」の構成になっていることを発見した。ジョージ・ルーカスはジョゼフ・キャンベルの講義に影響を受けてスターウォーズをつくったのは有名な話。スターウォーズは英雄伝説の母型を基に作られている。ぼくたちが英雄伝説の母型に、結末がわかっていてもワンパターンでも、はまってしまうのだろうか。「それは、人間にはもともとこのような物語回路が埋め込まれているからかもしれません。」

 

語り部が口で伝えていた物語は文字が生まれると、本になった。そして、いま僕たちは物語を本で読んでいる。本には、そういったアプリを作動させる機能があるのではないか。ぼくたちが物語を読んでだとき、なにかに気づくのは、そういうことなんじゃないだろうか。ぼくたちがスマホでアプリをインストールするように、その風土のアプリを知らぬ間にインストールしている。