10月6日

「考えて、行動し、また考える。考えることと、体を動かすことは別のようで、つながっている。行動し、手応えがあったからこそ、思いつくことは多い。触ること、手に持ってみること、すこしやってみることでわかるというのは、誰でも経験があるだろう。そういうときは、感じたり考えたりしているのではなく、体で感じ、考えている気がする。」(服部文祥『アーバンサバイバル入門』より)

「だいたいジャコメッティなんて、たったひとつの主語である彫刻家でくくれるようなアーティストじゃないですね。十年にわたってモデル・スケッチをやっています。たいへん悩み、苦しんで毎日造形をしつづけている。それは、ゴッホが向日葵を描いているときに、瞬間ごとに光が移っていってしまうので。それをずっと追いかけて、向日葵とキャンパスのあいだを往復しつづけて描き上げていったことにも似ています。ゴッホのばあいはそのあげく、ああいう燃えるような向日葵になった。ジャコメッティは毎日毎日モデルを描きつづけた。ところが、モデルと自分とのあいだにおこることが、毎日毎日変化してしまう。だから描いても描いても終わらない。いったいどうすればモデルと自分とのあいだを描けるのか。そのことにジャコメッティは神経を減らすようにしながら描きつづけたわけです。かくて、ジャコメッティはモデルを見なくなるんですね。そうして、対象を見て描くのではなく、対象の面影をアタマの中で描こうとしはじめる。」(松岡正剛『連塾−方法日本 神仏たちの秘密 日本の面影の源流を解く』)

秋の夜、言葉に吸い込まれる。