4月2日

ラジオからCoccoが流れる。京都の学生時代、御所の近くのKBSホールでくるり主催のみやこ音楽祭というのがあって、そこでCoccoの歌を聞いたのを思い出した。彼女がステージに上がって歌い出した刹那、意識がすべて彼女に向かった。目が惹きつけられるよりも早く。一度気になったものをすぐに忘れられないように、僕の意識もなにかを感じ取って離れない。なにかちがうぞと。Coccoに震え上がった感覚は忘れられないでいる。その場で体験しなければ、わからないことはあって、僕はそれを一番大切にしたい。

 

神戸で試合があって家の近くまで帰ってきた。暗い田んぼ道から下弦の月が西に見えた。ヘッドライトを切り、車から降りて、しばらく空を見上げた。時間は質でできているから、どんなに忙しくても、嫌なことがあっても、楽しくても、一日の中のすっぽりと空いた時間を見つけてひとりで月を見たい。月を見ることによって、月を見ていない時間は間違いなく変わるだろうから。月を見る時間がないなんて嘘だ。